正確な情報の大切さ

 最近あまりニュースでも取り上げられなくなった横浜市の「傾斜」マンション問題。昨年の日経アーキテクチュア(11月25日号)に「杭騒動 語られない真実」という記事が掲載されました。その中で興味深いところを抜き出して書くと、

 

「販売主の三井不動産レジデンシャルからは、外壁のタイル目地が最大2.4cmずれている、との報告を受けている。(横浜市)」


「傾斜したとか、沈下したなどと説明したことはない(横浜市)」

 

「杭打ちデータの偽装があったことは事実(三井不動産レジデンシャル)」

 

「杭が支持層に届いていないということについて物理的な裏付けはとれていない(諮問機関)」

 

となっていて、「偽装=傾斜」とするには、まだ正確な裏付けがとれていないということらしいです。

 

 なので、現段階では以下の2つのケースが考えられます。

 

・杭偽装はあった。しかし杭は支持層に届いており、タイル目地のズレは自然沈下かそれ以外の原因によるもの。

・杭偽装はあった。実際に杭は支持層に届いていなかった。タイル目地のズレはそれによるもの。

 

 では、なぜ「傾斜」マンションと断定的に報道されることになったのか?。それはタイル目地が2.4cmずれていたという事実。これをもってマンションが「傾斜している」と報道されているわけです。

 

 またこのタイルのズレが建物の沈下であった場合、それも「安全性を損ねるレベルとは言い切れない」としています。

 

 それはなぜかというと、品確法の技術基準において定められた瑕疵(この場合でいう杭未達による傾斜)の可能性があるとする1000分の3以上の傾斜に該当しないためです。

 

 問題のマンションの長手方向は54mあり、その3/1000は16.2cm。タイル目地のズレ2.4cmが沈下量と仮定した場合1000の0.4で、瑕疵がなくても通常起こり得る沈下量ということになるのです。

 

 杭の偽装そのものは、ユーザーを欺くもので到底許されるものではありません。また、杭が支持層に到達していいない可能性も捨て切れず、今後3/1000の沈下量に到達する可能性もゼロではありません。

 

 しかし、今回の件で、廊下のエキスパンションジョイントや手摺のズレを見て、「自分たちのマンションも傾斜しているのではないか?」と不安に感じている人も多くいると思われます。

 

 報道やマスコミには、正確な情報に基づく報道や情報発信をして頂き、人々を必要以上に不安にさせないよう、建築関係者者として切に願うばかりです。